野口晴哉の整体入門

野口晴哉 整体 骨盤
野口晴哉 整体

整体ということ

今、『整体』ということばには色々なイメージがあります。

 

街に整体院と名乗る場はたくさんありますし、整骨院と混同されたりもします。

 

整体院を名乗っていても、それぞれの先生はそれぞれの流派があって、そこで行われている施術は一様ではありません。

 

「体を整える」ことを技術やテクニックと考えるなら、それは当然のことでしょう。

 

が、私が考える『整体』は、単なるテクニックではなく、考え方、もっといえば哲学、思想です。

 

『整体』という用語は、そんなに古い用語ではなく、大正時代ぐらいから流行していた療術や手技療法とアメリカ由来のオステオパシーやカイロプラティックなどを組み合わせたものをそう呼んでいたようです。

 

百花繚乱、先生の数だけ流派があり、統一された体系はありません。

 

ですが、『整体』ということばを普及させたのは、間違いなく野口晴哉(のぐちはるちか)先生でしょう。

 

野口先生は明治44年生まれ。『社団法人整体協会』の創設者で、今も熱心なお弟子さんたちがたくさんいらっしゃいますし、現代の治療家にも計り知れない影響を与えています。

 

 

私が「野口整体」を初めて知ったのは、大学時代でした。

 

当時、心理学系の学会の事務局のお手伝いをしていた時に、頭が痛くて気分が悪くてうずくまっていた時に、ちょうど居合わせた女性が、頭に手を当てて下さったんですね。

 

すると、みるみる・・という感じで頭痛が治ったんです。

 

30年ぐらい前のことですが、その不思議さはありありと覚えています。

 

その女性のお顔も名前も忘れてしまっているのですが、それが「野口整体】の「愉氣」というものであることはその時に伺いました。

 

 

魔法のような・・という印象はあったものの、そのまま忘れていました。

 

それから年を重ね、30代の体調絶不調のさなか、からだに関する本を読み漁っているときに再び『整体』に出会いました。

 

「あ、これだ・・・」

 

結果的に私は「整体協会」で勉強することを選ばずに、国家資格取得のため、鍼灸按摩マッサージ指圧師の専門学校に入学したのですが、

 

今でも、考え方のバックボーンには野口先生の『整体』があります。

 

「病気は治すものではなく、治るもの」

 

「病気は生きていく中での一つの経過である」

 

「整体は交通整理のようなもの」

 

「整体は渓流の中の小石を一つ置き換えるようなもの。うまく置き換えると全体の流れが変わる」

 

何度も何度も繰り返し読みました。

 

 

天才の文章から、その真意をはかることは難しいことです。

 

 

何度読み返しても発見があるのと同時に、自分が臨床経験を重ねてみてもなおわからないことがあります。

 

 

そんな時に、私は片山洋次郎先生の文章を読みます。

 

『骨盤にきく』『身体にきく』『ユルかしこい身体になる』『整体。共鳴から始まる』など、

 

もちろん片山先生も天才なのですが、一般の方に向けて書かれているぶん、易しいし、からだの智慧として実践しやすくもあります。

 

患者さんにもいつもおすすめします。

 

 

つらいとき、しんどいとき、当然ひとは早く「治りたい」と思うし、当院にお越しくださるかたも、「治してもらう」ことを期待していらっしゃいます。

 

でもね、ごめんなさい。

 

私が「治す」ことはできないんです。

 

あなたが「治る」のに必要な場所を提供し、あなたが「治る」のに必要な気づきやきっかけになればいいな・・と思いながら、こころをこめて施術しています。

 

それは、肩こりであろうと不眠であろうと更年期障害であろうと不妊症であろうと同じです。

 

 

「ふれる」ことでからだの響く力を取り戻す。

 

 

はりやお灸の理論も、指圧のテクニックも道具にすぎません。

 

 

あなたの治る力を信じて、あなたのからだの声に耳をすまします。

 

 

悲しい想いや、つらいものを抱えていらっしゃるかたのおからだには、はっきりとそれがあらわれています。

 

それについて、患者さんがお話になりたいときはもちろん静かに傾聴しますが、

 

たいていの場合は、ことばとして聴くのではなく、からだの声として聴きます。

 

 

呼吸の変化や脈の変化、手ごたえの変化も診ていますが、自分自身のからだも同時に反応しするので(胸が重くなったり、手が冷たくなったり、あまりに重いものに触れると涙がでてきたりします)、その反応を感じながら施療を続けます。

 

そうするうちに、外側の声ばかりに氣を取られていた患者さんが、ご自身の内なる声に耳を傾けて下さるようになります。

 

そして困った症状が、ご自身のからだからのけなげなSOSであることを温かく受け止められるようになられると、ご自身で治る道を選び、つらい症状がご自身に与えてくれたものを感謝されるようになります。

 

私はそんな女性をたくさん見てきて、いつもそのたびに驚嘆と感動をおぼえます。

 

「答えはどこか別のところにあるのではなく、常にからだの内にある。」

 

私もそう信じています。